リスベート・ツヴェルガー 絵/H.C.アンデルセン 作
大畑末吉 訳/木村由利子 解説
定価:本体2,816円(税別)
34×22cm/67ページ/オールカラー
産経児童出版文化賞推薦
全国学校図書館協議会選定図書
子供たちにお話を聞かせて眠りにつかせる「眠りの精のオーレ・ルゲイエ」など8編のアンデルセン童話の世界を、気品ある落ち着いた色調で格調高く描きあげています。
ツヴェルガーとアンデルセンの幸せな出会いがつむぎだした鮮やかな色彩と奔放なイメージが絵本の隅々からあふれ出します。
「眠りの精のオーレ・ルゲイエ」
世界じゅうで、眠りの精のオーレ・ルゲイエおじさんほど、たくさんお話を知っているものはありません——まったくいくらでもお話ができるんですよ!
(中略)
さて、子供たちが眠りますと、オーレおじさんはベッドの上にすわります。その服装はなかなかりっぱで、絹の上着なんかきこんでいるのです。けれども、その色は、はっきり言うことはできません。からだを動かすにつれて、緑いろに光ったり、赤や青に光ったりするのですもの。そして、両方の腕に1本ずつ、こうもりがさをかかえています。片方の、絵がかいてあるほうのは、よい子の上にひろげるかさです。そうすると、その子は、一晩じゅう、とても楽しいお話を夢に見ます。ところが、もう一つのかさには、何もかいてありません。これはお行儀のわるい子の上にひろげるのです。そうすると、その子は、まるでばかみたいに眠りこけてしまって、朝になって目がさめるまで、なんにも夢を見ることができないのです。
「マッチ売りの少女」
「おばあさん!」と、少女はさけびました。「わたしをつれてってちょうだい! だって、わたし、知ってるわ。おばあさんは、マッチが消えると、いってしまうんでしょう。ちょうど、あのあたたかいストーブや、おいしそうな焼いたガチョウや、あの大きくて、すてきなクリスマスツリーのように!」
——そして、少女は大いそぎで、たばのなかの、残りのマッチをぜんぶこすりました。こうして、おばあさんをしっかりとひきとめておこうと思ったのです。マッチはとても明るく輝いて、あたりはま昼よりも、もっと明るくなりました。そして、この時ほど、おばあさんが美しく、大きく見えたことは、ありませんでした。おばあさんは小さい少女を腕にだきあげました。こうして、2人は光とよろこびとにつつまれて、高く高くのぼってゆきました。そこにはもう、寒いことも、おなかのすくことも、こわいこともありません。
——2人は神様のみもとに、召されたのです。