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丁寧に描かれたファッションや小道具も見どころ 鼻のこびと

リスベート・ツヴェルガー 絵/ヴィルヘルム・ハウフ 作
池内紀 訳
定価:本体2,400円(税別)
28×23cm/47ページ/オールカラー
日本図書館協会選定図書

わるい妖精にさらわれたヤーコプがいねむりから覚めると、7年が経過し、みにくいこびとの姿に変わっていた…。19世紀初頭を駆け抜けた夭折の作家ハウフの奇想天外で不思議な透明感に満ちたメルヘンの世界。物語の恐さとおかしさを、ツヴェルガーが繊細な感受性と洗練された表現力でみごとに描きあげています。

※申し訳ございません。現在こちらの商品に関しては品切れ中です。

STORY

「母さん、よく見てよ。息子のヤーコプじゃないか」
「あつかましいこびとじゃないか」
母親は、となりの女に声をかけた。「ごらんよ、前でうろちょろして、せっかくのお客をおっぱらっちまう。そのうえ、人の不幸をだしにするんだ。息子のヤーコプだなんて、なんてことをいうんだろう!」
まわりの女たちが立ちあがって、口ぎたなくののしりだした。——市場の女たちが、口さがないことは、あまねく天下に知られている。——かわいそうなハンネは、7年前に、かわいい息子をさらわれてしまった。その不幸をだしにやってくるとは、なにごとか。女たちは、いまにもつかみかかるように手をふりまわして、わめきたてた。
ヤーコプは、なにがどうなのか、さっぱりわからない。たしか今朝、いつものように母親と市場にやってきて、くだものをならべるのを手伝った。年とった女の荷をはこび、その家でスープをいただいて、少しのあいだ、いねむりをした。それから大いそぎでもどってきた。そのはずなのに、母も、まわりの女たちも、7年たったなどという。みっともないこびとだという。いったい、どうなったのだろう?

料理長の命じたとおり、すべてかまどの上に用意された。しかし、こびとには、かまどが高すぎる。鼻がようやく、届くぐらいだ。そこでいすをならべ、そこに大理石の板を置いた。
こびとが上にあがって料理をはじめた。まわりに円をつくって、料理人や、見習いの少年や、召し使いたちが見守っている。こびとの手先ときたら、目にもとまらぬほど早いのだ。すべてが手ぎわよくさばかれていく。つづいてこびとが命令した。ふたつのなべを火にかけろ。こちらがよしというまで煮立てること。そして、ひとつ、ふたつと数をかぞえはじめた。500をかぞえたとき、「とめろ」とさけんだ。なべが下ろされ、こびとが料理長に味見をすすめた。
見習いの少年が金のスプーンですくって、味見係の口にふくませ、それからスプーンを料理長に手わたした。料理長はもったいぶったしぐさでかまどに近づき、スプーンからひと口、のどに入れたとたん、目をとじた。

リスベート・ツヴェルガー

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