COLUMN コラム

社長の言葉はなぜ届かないのか?

2025.05.30 SHARE

あなたの社内報制作に効く「余白思考」

この本のタイトルを目にして、共感を覚えたり、その理由を自分なりに考えたりした広報担当者も多いのではないでしょうか。私もタイトルを見ていろいろな理由を頭に浮かべながら本書を手に取りました。

「社長の言葉」を「会社からの発信」に置き換えたり、「なぜ社内報は読まれないのか?」と置き換えたりして、広報担当者の方の日常業務に引き寄せながら読むと、さらに多くの気づきがあるはずです。

著者の竹村俊助氏は、『佐藤可士和の打ち合わせ』など多くのヒット作を担当した編集者。独立後、経営者の言語化、コンテンツ化をサポートする「顧問編集者」として活躍されています。多くの経営者の発信をサポートしてきた経験を踏まえた言葉には、深く共感し、新たな視座を得ることができました。本書は7つの章から構成されています。

    第1章 なぜ今、経営者自身が発信すべきなのか?

    第2章 「経営者の言葉」がもたらす計り知れない効果

    第3章 企業の発信は、なぜつまらないのか?

    第4章 企業のためのコンテンツ制作入門

    第5章 コンテンツ作りは「取材」が9割

    第6章 面白いコンテンツは誰でも作れる

    第7章 「noteとX」が最強の組み合わせ

企業の広報ツール制作をサポートする太平社のディレクターという立場から、この本を読んで特にシェアしたい5つのポイントを広報担当者の皆さんにご紹介します。

年間コンテンツマップ12のテーマ

広報ツール制作における相談内容でとても多いのが「読みたくなる企画」について。太平社では、企業ごとに課題や方針を整理する中で、年間企画案を一緒にまとめていくことがあります。そんなシーンでもとても参考になりそうな「ネタ切れしない! 年間コンテンツマップ」が本書には掲載されています。

心を動かすコンテンツには「面白い」と「役に立つ」という要素が必要であるという考え方のもと、それに時間軸で「過去」「現在」「未来」を掛け合わせた6のマトリクスでそれぞれのコンテンツができます。それに「個人」「法人」を掛け合わせると12のマトリクスに。例えば、「面白いこと」×「現在」×「法人」では、「プロジェクトX」のようなテーマとなるわけです。このマップを眺めているだけでも、企画に悩んでいる担当者にとっては大きなヒントになるはず。ぜひチェックしてみましょう。

質問は5つまでで、できればぶっつけ本番が望ましい

「取材の内容がつまらなくても、書くときに面白くできるだろう」というのは難しいという指摘にはハッとさせられました。つまらない取材からおもしろい文章は生まれないということ。読みたくなるコンテンツのためには、文章を上手に書く以前に、面白い話が出てくるような取材をできるようになることが大事だという点には大きく頷けます。案外、読みたくなるコンテンツにしようと何度も文章に手を入れることはあっても、取材の準備や取材方法などを見直すことはなかったという方も多いのではないでしょうか。

本書では「取材の前にやるべきこと」「取材に熱が帯びる質問」「相手の考える時間を奪わないテクニック」など今日から使いたくなるヒントが公開されています。1時間の取材なら質問数は5つくらいにして、できればぶっつけ本番で、それぞれを深堀していく方が面白い取材になるとも語られています。

社内報の取材の場合、インタビューに慣れていない社員だからという理由で事前に質問をたくさん送り、当日それに一問一答で答えてもらうだけですぐに話が尽きたというお悩みを聞くことがあります。そうならないようにどう取材に臨むべきかを改めて考えるヒントをぜひ本書から掴んでください。

「長い文章が読まれない」のではなく、「つまらない文章が読まれない」

「文章が長いとうちの社員は読まないので…」という声は社内報制作の現場でもよく聞こえてきます。それは長いからではなく、つまらないから読まれないのであって、つまらない文章は短くても読まれないという話はとても印象的でした。長い文章には、没入感を与えたり、世界観に浸らせたりすることができるなど、アドバンテージがあるということについても解説されています。

経営者の描くビジョンや経営計画、社員一人ひとりの事業への情熱など、企業内の世界観に深く共感させるには、長文のアドバンテージを理解して大いに活用することも大事なはずです。本書では、長い文章でも最後まで読んでもらうためのテクニックについても詳しく紹介されています。「長い文章は読まれない」という思い込みを捨て、長文でも喜んで読んでもらえる文章を届けるためにはどうすべきかを考えるきっかけになるでしょう。

ヒトはストーリーを見出したがる脳のクセがある

聖書や神話、童話を例に挙げながら、ヒトは何かを見聞きした時に、そこにストーリーを見出したがる脳のクセがある。ストーリーは「ウィルス」のように周りに伝播していくという話が出てきます。社内報など企業からの発信の場合も、社内の出来事をただそのまま伝えるだけのニュースより、それに関わったメンバーのストーリーが伝わる記事の方が読者に刺さり、話題になって広がっていくことを実感している方も多いはずです。

しかし実際は、出来事の裏に流れるストーリーを丁寧に紡ぐことができず、起きた事だけを寄稿してもらい掲載するケースも多いのではないでしょうか。取材して直接当事者の声を聞き、ストーリーを伝えるということができない場合であっても、寄稿依頼の際のアンケート項目の工夫などにより、少しでもストーリーを含ませるコンテンツにしていくことの重要性を改めて感じました。

働くという分野においてもコンテンツ化が求められている

人間はより豊かで充実した生活を求める生き物で、そんな世界では意味やコンテンツがますます求められる。「働く」という分野でも例外ではなく、「この仕事に意味があるか?」「なぜこの会社で働くのか?」と多くの人が考えるようになっている。企業も「心を動かすコンテンツ」を提示していかなければならない時代だという話が印象的でした。

人生の多くの時間を費やす「働く」という行為に、自分なりに納得できる意味を見出したいという願いは誰もが抱いているでしょう。働き方やその価値観が多様化する現在では特に、社員一人ひとりが「自分の価値観」と「会社が描くビジョン」に少しでも重なり合う部分を見出すことが大事になっているはずです。そう考えると、企業による「コンテンツの発信」は一人ひとりの人生の豊かさに直結することを実感するとともに、広報担当者が担う仕事の尊さを再認識しました。

社長の言葉はなぜ届かないのか?  
経営者のための情報発信入門

著者:竹村俊助
発行:総合法令出版株式会社
価格:1800円(税抜)

お問い合わせ・ご相談

お問い合わせやご相談をされたい方は、
お気軽にこちらのフォームよりご連絡ください。

お問い合わせ

資料請求

当社会社案内、実績集などをご提供しています。
お気軽にご活用ください。

資料請求

お電話でのお問い合わせはこちら

TEL : 03-3631-7194

平日9:00~18:00まで

Copyright © 2021Taiheisha.LtdAll Rights Reserved.